学童保育 資格で安心…民間の認定制度広がる

YOMIURI ONLINE
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 共働き家庭の子どもらを預かる放課後児童クラブ(学童保育)の指導員を対象にした
民間団体の資格認定制度が広がっている。
指導員には法などが定める資格がなく、
「安心して預けられる環境を」と望む保護者が多いためだ。
指導員側も、資格がないことで非常勤など不安定な雇用となっている側面があり、
指導員の質の向上と待遇改善の双方の狙いがあるという。(藤原慎也)

 岡山県倉敷市。国と市の補助を受け、
小学校跡地で住民らが運営する学童保育「ながおキッZ児童クラブ」。
小学生191人が、テーブルを囲んで一緒におやつを食べたり、
お絵かきや、コマ回し、大縄跳びで遊んだりと、思い思いに過ごす。
「早くサッカーやろう」と男児に手を引かれた
指導員の若井暁あきらさん(39)が優しい笑顔で応えた。

 若井さんは2011年3月、岡山市の
NPO法人「日本放課後児童指導員協会」が認定する民間資格
「放課後児童指導員」を取得した。
公的な資格ではないが「自分の指導が正しいか、裏付けがほしかった」ときっかけを話す。
同クラブでは指導員15人中8人が同じ資格を取得。
11年間パート勤務だった若井さんを含め3人が正規雇用になった。
パート時代に6万~7万円だった若井さんの月給は基本給16万円にアップ。
厚生年金など社会保険にも加入できるようになり、「生活レベルが改善された」という。

 預ける側からも好評だ。
今春まで利用していた児童の保護者で
同クラブの運営委員会副委員長、原由美さん(47)は
「子どもの扱いが上手で安心。知識も豊富で子育ての相談にものってもらえる」と喜ぶ。
倉敷市も指導員の資質向上につながるとして、
クラブへの委託金を増額するなど、バックアップしている。

 この資格は09年に大学教授や指導員らがNPOを設立して始めた。
9日間の有料講習で、子どもの発達に関する知識、児童との関わり方などを学び、
修了すれば「認定証」が発行される。

 創設の背景には、指導員の知識や技能を担保する仕組みがないことがある。
厚生労働省は「小学校教諭や保育士などの有資格者がのぞましい」との指針を示すが、
条件を満たすのは全国の計約8万6000人の指導員のうちの約7割。
約3割にあたる約2万5000人は、教諭や保育士資格のない地域住民らだ。

 同NPOの中山芳一副理事長は「子どもを長時間預かる以上、
何らかの基準が必要だ。指導員の社会的地位の向上にもつながる」
と資格の意義を強調する。

 学童保育の質の向上につなげたい自治体からの要望もあり、
奈良、滋賀、佐賀の各県でも講習会を開催。
4年間で14府県の428人が資格を取得した。

 同様の取り組みは、各地で広がりつつある。
名古屋市では10年にNPO「学童保育指導員協会」が、
福岡県小竹町でも12年にNPO「学童保育協会」が独自の資格制度をスタートさせた。

 大阪市でも今年4月、大学の研究者や指導員らが
一般社団法人「日本学童保育士協会」を設立。
今秋から資格制度を創設する予定だ。
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